東京高等裁判所 昭和29年(て)5号 決定
しかしながら、裁判所が被告人の請求により国選弁護人を選任した場合、弁護人の住所氏名を被告人に通知することはなんら法の命ずるところでない。また、本件の場合、その言い渡した判決の内容を被告人に通知しなければならないものでもない。記録によると、請求人としては昭和二十八年九月三十日に判決の宣告があることは同月十六日にその旨の公判期日召喚状の送達を受けて十分知つていたわけであるから、たとえ国選弁護人から判決結果について連絡がなく、また弁護人に照会する方法がなかつたとしても、当裁判所に問い合わせる等の方法により容易にこれを知ることができた筈である。しかるに請求人はその後約五十日を経て検察庁から罰金の納付命令があるまでなんらかかる措置を講じなかつたためその間判決の確定を見て上訴の手段を失つたというのであるから、自己の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴をすることができなかつたものとは到底いうことができない。従つて本件上訴権回復の請求はその理由がないので、これを棄却することとし主文のとおり決定する。